第3回 住宅エネルギーシンポジウム

エネルギー消費実態と実効性ある削減対策」の実施にあたって

 

 地球温暖化は、人類の生存に関わる深刻な問題である。この問題に対応するための国際的な取り決めである「京都議定書」は、アメリカの離脱やロシアの動向により発効するかどうかは予断を許さない状況にある。議定書が発効するか否かは別にして、日本も「環境の21世紀」に地球温暖化防止の使命を担わなければならないことは当然である。

 環境負荷削減や省エネルギーの短期的な目標は、「京都議定書」の2010年の二酸化炭素排出量を1990年比6%削減というものであろう。しかしながら現在のエネルギー消費の状況をみると、この目標の達成はとても難しいものといわざるを得ない。特に住宅部門のエネルギー消費は1990年度に4,300klだったものが2001年度には5,300klへと1,000klの増加(この間日本全体では6,400kl増加して、2001年度には4800klのエネルギー消費)となっている。この結果、住宅部門のエネルギー消費は日本のエネルギー消費の約13.0%(1990年は12.5%)をしめるに至った。

 この秋に予定される「地球温暖化対策推進大綱」の見直しにおいては、住宅・建築物の省エネルギーの具体的な手法が議論されよう。このような作業のためには、住宅内のエネルギー消費の詳細や将来動向に関して、詳細な調査研究が求められている。

 このような背景のもとに日本建築学会では、「住宅内のエネルギー消費に関する全国的調査研究」を平成13年度〜15年度に実施した。本研究は、@住宅のエネルギー消費量を実測とアンケート調査により把握しデータベース化すること、A住宅内のエネルギー消費機器評価手法を確立すること、B住宅のエネルギー消費量予測モデルを開発すること、を目的としている。

 日本建築学会としては、本研究の成果を公表することを通じて、消費者や設計者が独自の判断で環境に配慮した住宅や住宅設備機器を選択あるいは設計・建設し上手に使用すること、及びハウスメーカ・機器メーカが環境に配慮した開発を行う際の指針ともなること、が可能となる学術的根拠を提供することを目的としている。3年間で得られたデータは膨大であるため、これらをより使いやすいものとすることを現在企画しており、本日のシンポジウムの結果もふまえて一年程度でマニュアル・設計資料などとしてまとめ、出版やホームページでの公開を行う予定である。

なお、本研究は国土交通省から「公営住宅等関連事業推進事業」としての補助金と、東京電力・関西電力・中部電力・九州電力注)からの委託を受け実施したものである。

 

                                                   2004年5月

 

社団法人 日本建築学会 前副会長

住宅内のエネルギー消費に関する調査研究委員会

委員長 村 上 周 三

 

 

 

注)東京電力、関西電力(平成1315年度)、中部電力(平成1314年度)、九州電力(平成1415年度)