全電化住宅における室内温熱環境の長期実測調査
                                                                                               船山 良幸
 
1 研究目的
 近年、温熱・空気環境に対する快適性や利便性、安全性の観点から、全電化高気密・高断熱住宅が建設されている。
 本研究では、全電化高気密・高断熱住宅を対象として、年間を通じた室内温熱環境の実測調査を行い、夏季・冬季のみならず中季を含めた問題点や今後の課題について検討する事を目的とする。また、空調電力量についても併せて実測を行い、その関係についても検討する。
 
2 調査概要
2.1 対象住宅
 新潟市に建設された全電化高気密・高断熱住宅を対象とする。対象住宅の概要を表1に、平面を図1に示す。対象住宅では、2台の熱交換型換気扇を使用して、常時換気を行っている。冷暖房にはヒ−トポンプ、個別エアコン、潜熱蓄熱式電気床暖房及び3台の蓄熱式暖房器を使用している。
 
2.2 実験条件と測定期間
 対象住宅には、夫婦と子供1人(小学生)の3人が居住しており、日常生活状態での温湿度を測定する。測定期間は1997年5月13日から1年間である。
 
3 測定結果
3.1 各室の温湿度の平均日変化
(1) 夏季の平均日変化
 8月の平均日変化を図2に示す。外気温は明け方22.5℃、午後3時に最高の約30℃と変動するが室温は27℃前後で安定している。また、20時から正午までは外気温より室温が高くなる。 室内の相対湿度は1日を通じて約60%、絶対湿度は13g/kg’で安定している。  
(2) 冬季の平均日変化
 2月の平均日変化を図3に示す。外気温は2〜5℃の範囲、室温は22〜25℃の範囲で1日中安定している。外気の相対湿度は70〜80%であるが、室内は30〜50%とやや乾燥している。特に2階の居間の湿度が低い。絶対湿度は4g/kg’前後で安定している。
 
3.2 日平均外気温と日平均室温の関係
(1) 夏季の外気温と室温の関係
 夏季の外気温と室温の関係を図4に示す。寝室は、居間より1℃ほど高い。書斎は、ややばらつきがある。外気温が1℃上昇すると書斎0.21℃、寝室0.27℃、居間0.26℃それぞれ上昇する。
(2) 冬季の外気温と室温の関係
 冬季の外気温と室温の関係を図5に示す。書斎は、居間より1℃ほど高い。外気温が1℃下降すると書斎0.21℃、寝室0.24℃、居間0.23℃それぞれ下降する。
3.3 代表的な一日の温度・空調消費電力量の変化
 夏季・冬季の一日の温度・空調消費電力量の変化を図6に示す。
 夏季は12時から外気温が特に上昇するが、室温はセントラル空調が入るため徐々に下がる。書斎の温度は個別エアコンを入れると下がり始める。
 冬季の夜間は外気温が-1〜2℃であるが、深夜電力を利用した暖房器具を使っているため室温は22℃程度で安定している。
 
4 まとめ
@夏季の室内温熱環境は、温度27℃前後、相対湿度約60%、絶対湿度13g/kg’で1日中安定しており快適である。
A冬季の室内温熱環境は、温度22〜25℃、相対湿度約30〜50%、絶対湿度4g/kg’で若干乾燥してる。
B室温は、シェルタ−性能が高く、冷暖房を行っているため外気温の影響を受けず、安定している。
C高気密高断熱住宅では、夏季の夜間の室温と外気温が逆転し、熱の排出の困難さが問題点として指摘される。



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