市街地における風環境数値解析の予測精度に関する研究
中島 弘喜
 
1 研究目的
 風環境の予測には主に風洞実験が用いられる場合が多い。近年、流体の数値解析手法が進歩し、これを用いた予測手法に関する研究が行われており、実用化の段階を向かえている。
 本研究では、新潟市の市街地を対象とした風環境の数値解析を行い、計算領域のメッシュ分割の相違による予測精度の変化及びメッシュ分割を行う際の建物の再現率を風洞実験結果と比較することにより検討することを目的とする。
 
2 研究概要
2.1 対象地区(図1)
 新潟市の中心地より海側で、信濃川の河口に近い市街地を対象とする。駐車場として利用されていた土地に、9階建て集合住宅が建設予定である。この土地に隣接して10階建てマンションが存在する。
 
2.2 計算ケース(表1)
 全体を荒く切ったメッシュをcase1、建設予定の建物周辺を細かく切ったメッシュをcase2、全体を細かく切ったメッシュをcase3とする。
 
2.3 計算領域(図1)
  143(x)×165(y)×200(z)m
  (x:SSE方向,y:ENE方向,z:鉛直方向)
 
2.4 メッシュ分割
図2図3図4表1に示す
 
2.5 境界条件
 流入条件は、地表面近傍では地表面粗度要素Z0を用いる形式の対数則で近似し、上空では市街地の風を想定したべき指数0.2の指数則で与える。
 
3 研究結果
 図5にcase3のメッシュ分割による風向NW、地上2m高さの水平断面内の風速ベクトル、図6に風速比の分布を示す。建設予定の集合住宅によって風が遮られるため、建物周辺に複雑な流れが生じる。集合住宅の北側では下降流によって逆流が生じ、南側では建物を越えた風によって渦領域が形成されている。東側では建物の側面で生じた剥離流と街路風によって、風速比が増大する。
 図7にcase1〜3のメッシュ分割による風向NW、地上2m高さの数値計算結果と風洞実験結果の風速比の比較、図8に風向の比較を示す。風速比の比較では、case1(約25万メッシュ)とcase2(約50万メッシュ)は、ほぼ同様の結果となり、case3(約100万メッシュ)では、多少の改善がみられる。風向の比較では、case2が最も良い結果となり、case1,3は予測精度が良くない結果となる。全体的に風速比・風向ともにメッシュ分割の相違による数値計算の予測精度の向上は明確に表れず、更に計算時間を考慮すれば50万メッシュ程度が実用的であると考えられる。
 
4 まとめ
 計算の対象地区は、低層の市街地の中に高層建物が2棟隣接しており、モデル化が困難なため、メッシュ分割の相違による数値解析の予測精度の変化は明確には認められなかった。今後、乱流モデルも含めた検討が必要である。



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