新潟県の住宅における室内温熱環境とシェルター性能に関する研究
その3 夏季と冬季の室内温湿度の調査結果             高橋 勝幸

1 研究目的
 本報(その3)では前報に引き続き対象住宅における夏季、冬季の室内温湿度について報告する。

2  調査内容 
調査内容を表1に示す。室内温湿度調査は、夏季と冬季にそれぞれ行う。
外気温は屋外に百葉箱を設置し測定する。 測定機にはメモリ内蔵の温湿度計を用い、
10分間隔で約1週間自動計測する。

3 調査結果
3.1 夏季の室内温湿度の日変化

 セントラル式の冷房を使用している住宅の例を図1に示す。セントラル式の冷房を使用している住宅は一日中冷房を運転している場合が多く、居間の温度は非冷房室に比較して常に2〜3℃低い。また室温の変動も外気に大きく左右されず日変化も小さい。
 個別エアコンを使用している住宅の例を図2に示す。個別エアコンを使用している住宅は冷房の使用率が低く、夕食後の団らん時のみ使用する場合が多い。団らん時の居間の温度は、非冷房室と比較して約3℃程度下がるが、朝方や在室者の少ない日中の居間温度は非冷房室と同様の変化を示す。
3.2 冬季の室内温湿度の日変化
(1)室内外温度差と室上下温度差の関係
 冬季の調査対象住宅の、居間における団らん時の室内外温度差と室上下温度差の関係を図3に示す。室内外温度差16℃〜22℃、室上下温度差1〜5℃の範囲に入る住戸が多く、回帰式はY=0.14X+0.38となる。
(2)使用暖房システム別の室温の平均日変化
 全館暖房設備を使用している例を図4に示す。全館暖房設備を使用している住宅の殆どは、居間の床上110p温度が終日20〜21℃の範囲に入り安定している。これらの住宅の殆どが一日中暖房を運転しているため、この住宅と同様の温度変化を示している。また、上下温度差が少ない住宅が多い。これは住宅全体の温度が均一なため、居間と隣接する空間と居間の温度差が小さくなることが理由であると考えられる。
 床暖房設備を使用している例を図5に示す。この住宅は在室時のみ床暖房運転するため起床時から正午までに室温は約17℃まで上昇し、夕方の団らん時まで温度はほぼ一定であり、団らん時に約19℃となる。就寝時と考えられる午後10時頃から床暖房を停止するため、起床時の6時頃まで温度は下降している。全体的な温度の変動は小さく、1日の最高温度と最低温度の差は5℃程度である。
 個別暖房を使用している例を図6に示す。個別暖房を使用している住宅は在室時のみ運転のため、温度の変動は大きい。日中の在室時は20℃前後であるが、就寝時(暖房停止時)から温度は下降し、起床時には約12℃まで下がる。また、各測定点の温度差も大きく、床上110p温度と床上5p温度には、日中で約4〜5℃前後の差が生じている。同様に床上110p温度と天井下10p温度の差も日中約4〜5℃生じているため、天井付近と床付近の温度差は約10℃程度である。
 



参考文献
【1】 長谷川 房雄、赤林 伸一他:「東北地方都市部の木造独立住宅における冬期の温熱環境に関する調査研究」 日本建築学会論文報告集第326号、昭和58年4月



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