高効率換気システムに関する研究
① 背景
～従来の換気設備設計方針～
(ⅰ)室内で発生た汚染質を排出する。
(ⅱ)外気により汚染質を希釈し許容濃度以下に保つ。
(ⅱ)の場合には室内における汚染質の一様拡散を仮定しており効率を考慮しているとは言い難い｡ このような研究背景より、外気の供給位置を検討することで在室者に効率的に新鮮外気を供給することができれば、呼吸域の空気質の向上が図れ、効率的な給気により供給外気量の削減も可能であると考えられる。 本研究では､オフィス空間を対象として呼吸域に直接新鮮外気を供給する方式について、実大実験により検討し､外気の供給効率を空気齢を用いた空気交換効率により評価する事を目的とする｡
② 空気齢とは（図１，２，３）
空気齢は給気口から供給された新鮮外気が室内のある点に達するまでの平均時間で表される。ここで紹介する換気効率指標はこの空気齢を元に算出されるので、効率の善し悪しを評価するためには新鮮外気は部屋に供給された瞬間から汚染され始め、部屋の中に存在する滞在時間に比例して徐々に汚染されていくとの前提が必要不可欠である。
③ 実験概要（図４，５）
対象とした空調･換気方式の概要を図４に示す。従来方式の図４(a) では新鮮外気は空調機内部で循環空気と混合され室内に供給される。従って､新鮮外気は呼吸域以外にもほぼ均一に供給されることになる。図４(b)の換気タワーを用いた方式では､新鮮外気を直接換気タワーから供給するため、外気は人体呼吸域にのみ供給されることが予想される。この場合、空調機は室内の温湿度調整のみに使用される。
④ 実験ケース（表１）
ケース１～４が、新鮮外気を空調機内で循環空気に混入した後、室内に供給する従来の方式であり、ケース５～８が、外気を呼吸域に直接供給する換気タワー方式である。また、いずれの方式においても、設定外気量は一人あたり30m3/hで、吸込口は天井に設置する。
⑤ 濃度経時変化（図６）
従来の方式であるケース1では、いずれの測定点においても同様の濃度の上昇、減衰の傾向を示す。それに対して、換気タワーを用いた方式であるケース５では、換気タワー吹出口および呼吸位置において、呼吸域以外の測定点より速やかな濃度の上昇、減衰がみられ、定常に達するまでの時間も短くなっています。
従来の方式であるケース1では、天井に近づくほど空気齢は若干長くなりますが、人体呼吸域を含めて、全体的に空気齢のばらつきは少なく、40分～45分程度となっている。 それに対して、換気タワーを用いた方式であるケース５では、人体呼吸域において、高さ1.2mの平均空気齢と比較して約15分短くなる。 ケース１と比較すると、呼吸域以外の空間では同様の値を示すのに対し、人体呼吸域においてはケース３が13分～20分程度短くなっている。
⑦ まとめ
空気齢の比較から、新鮮外気を換気タワーを用いて直接呼吸域に供給することは、居住者に新鮮な外気を供給するための有効な方法であると考えられる。 今後は、数値解析で室内のレイアウトやパラメータを変化させ、詳細な解析を行い実用化に対する問題点等を検討する予定である。