独立住宅の自然換気に関する実験的研究
その4 暖房時の換気量の測定結果
1 序
- 本研究では、モデル化された実大の実験住宅を広闊地に設置し、この実験住宅の換気
性状と外部風向風速の統計的性状を明らかにし、建築物の換気設計資料を蓄積すること
を目的とする。本報では、前報に引き続き実大住宅モデルを対象とし、暖房時の室内外
圧力差分布、換気量の測定結果を報告する。
2 実験概要
2.1 実験対象施設
- 前報と同様である。
2.2 測定方法
- 風速、温湿度は前報と同様である。
(1)実験対象住宅の圧力分布:各風圧板の圧力を多点差圧計を用いて同時測定する。測
定は1秒毎に行い、1分間毎の平均値を算出する。
(2)換気量:実験対象住宅をダクト付きファンで加圧し、トレーサーガス(エチレン)
を発生させ、その定常時の濃度から換気量を算出する。同時に室内外圧力差から換気量
を算出して、ガス濃度より算出した換気量と室内外圧力差より算出した換気量の比較を
行い、両者が一致することを確認する。実験中は、実験対象住宅の通気パイプ前後の圧
力差から換気量を算出する。算出方法を注1,2に示す。
2.3 実験条件
- 実験条件は前報と同様である。
3 測定結果
3.1 換気量の比較(図1)
- ガス濃度より算出した換気量と室内外圧力差から算出した換気量は、ほぼ一致する。
3.2 換気量の変動(図2)
- 期間中の外部風速は、各ケースとも0〜10m/sと変動が大
きく、外部風速が大きくなるにつれて換気量が増加し、外部風速の影響を大きく受けて
いる。
3.3 換気量と外部風速の関係(図3)
- ケース1,2,4,5とも外部風速と換気量に
は正の相関が見られる。風速が1m/s増加するとケース1、2、4、5でそれぞれ
33/h、45/h、25/h、
15/h換気量が増加する。また、ケース1では外部風速が6m
/sの時には換気量は約 300/hであるが、ケース2で
270/h、ケース4で150/h、
ケース5で100/hとなる。
3.4 換気量と室内外温度差の関係(図4)
- 各ケースとも10〜30℃の室内外温度差があ
るが、外部風速が大きいために外部風速と換気量の関係ほど明確な相関は見られない。
外部風速が2m/s未満の低風速時の室内外温度差と換気量の関係も相関は見られない。
4 まとめ
- 実物大の住宅モデルを対象に風圧分布、換気量等の測定を行った。結果として以下の
ことが明らかとなった。
- 1. ガス濃度により算出した換気量と圧力計により算出した換気量はよく一致する。
- 2. 換気量は主に外部風速に影響されており、外部風速が増加すると換気量も増加する正
の相関が見られる。回帰直線の傾きは、実験住宅の隙間が減少すると外部の影響を受け
にくくなり、傾きも小さくなる。
- 3. 測定期間中の外部風速が大きいため室内外温度差と換気量には明確な関係は見られな
かった。
今後、内外温度差と外部風速による換気量の推定式を作成し、室内外圧力差より求め
られる換気量との比較を行う予定である。