新潟市における風環境の評価方法に関する研究
その4 風環境に関するアンケート調査結果
1 序
- 前報(その3)では、実測調査の結果について報告した。本報(その4)では、住民
に対する風環境に関するアンケート調査結果について報告する。
2 調査概要
2.1 対象地区
- 前報(その1)と同じである。
2.2 調査方法
- 1日単位で記入する調査用紙を1ヶ月毎に配布、回収する。期間は、19
94年10月〜1996年3月(1.5年間)である。アンケートは2つの調査項目からなる(表1)。
調査1は1日の風の印象を7項目の中から1つ選ぶもの、調査2は風によって生じた、地
点A〜Eでの現象を4項目(1〜4)、地点にかかわらない現象を13項目(5〜17)計17項
目の中からすべて選び、それが生じた時刻を記入するものである。また、1995年4月か
らは、外出時の風の影響に配慮するため、外出した時間帯を記入できるアンケート用紙
に変更した。
3 調査結果
3.1 調査1
- 評価段階1〜7(1日全体の風環境の印象の程度)の申告頻度を図1に示す。夏
季と通年の期間では評価段階3(適風)がそれぞれ約45%、約35%、冬季の期間では評価段階
4(不快ではないが、風は強い)が約30%と最も申告が多い。評価段階1(無風)は、夏季、冬
季、通年の期間ともに申告頻度は約2%である。評価段階2(もう少し風が吹けば良い)は、
夏季に約10%申告されるが、冬季では約1%である。評価段階5(風が強く不快)、6(危険は
感じないが強風)、7(強風で危険を感じる)は、冬季の方が夏季より頻度が大きい。また
、夏季と冬季の差は、評価段階が進むにつれて大きくなる。次に、各評価段階の申告の
頻度と、測定点1〜4の日最大平均風速との関係を図2に示す。風速が大きくなるほど
評価段階6(危険は感じないが強風)、7(強風で危険を感じる)の割合が多くなる。評価段
階3(適風)の累積頻度が80%のとき、測定点1では風速約12[m/s]、測定点2では風速約
10[m/s]、測定点3、4では風速約7〜8[m/s]である。評価段階5(風が強く不快)の累積
頻度が80%のとき測定点1では風速約20[m/s]、測定点2〜4では風速15[m/s]前後である
。測定点2では、風速約6[m/s]以下のとき、評価段階2(もう少し風が吹けば良い)と3(適
風)の風速による累積頻度の差が小さい。これは、夏季と冬季の風速の累積頻度の差が、
他の測定点より全体的に小さく(前報図2)、また評価段階2(もう少し風が吹けば良い)の
申告は、気温の高い夏季に集中するので、他の時期に適風(評価段階3)と感じられる風速
でも、不快と感じられることがあるためと考えられる。
3.2 調査2
- 地点 における現象1〜4の申告の頻度と上空の測定点1の10分間中の最大瞬
間風速との関係を図3に示す。ここで用いた風速は、申告時刻を含む10分間中の最大瞬
間風速である。風速が速くなるにつれて、現象1(髪や衣服が乱れる)は申告が少なくなり
、現象4(歩行困難)は申告が多くなる。累積頻度が20%、50%、80%のときの風速は、現象1
(髪や衣服が乱れる)で順に約4[m/s]、約8[m/s]、約15[m/s]、現象2(傘がさしにくい)で
約7[m/s]、約14[m/s]、約20[m/s]、現象3(歩行中バランスを崩す)で約12[m/s]、約19[m/
s]、約24[m/s]、現象4(歩行困難)で約18[m/s]、約24[m/s]、約28[m/s]である。次に、現
象5〜15と風速との関係を図4に示す。ここで用いた風速は、申告時間帯の中で、最も風
速の速い10分間の平均風速である。現象5〜15は、複数回答であるため、現象15(家がゆ
れる)の頻度が大きければ、他の現象の頻度も大きくなる傾向がある。申告は現象10(建
具がゆれる)が最も多く、次いで、現象15(家がゆれる)が多い。現象5(弱風でむし暑い)
は、風速が速くなるにつれて頻度が小さくなる。現象6(風で寒さが増す)、7(ごみが舞い
上がる)は、風速約5[m/s]から一定の頻度で申告がある。現象8(雨、雪が車庫に吹き込む
)、9(干し物が飛ぶ)は、風速約10[m/s]で申告が多い。現象10(建具がゆれる)は、風速約
18[m/s]まで徐々に申告が増える。現象12(自転車が倒れる)は、風速約12〜13[m/s]で現
象10(建具がゆれる)、11(隙間風が多い)より申告頻度が大きい。現象13(窓を開けられな
い)は、風速約10[m/s]以下で現象11(隙間風が多い)、12(自転車が倒れる)より比較的頻
度が大きい。現象14(外に出られない)は、風速約18[m/s]で申告頻度が最も大きい。現象
15(家がゆれる)は、風速約15[m/s]で申告が増え始める。
4 まとめ
- 1. 50%の居住者が風について不快と感じ始めるのは、上空の測定点1で日最大平均風速
約15[m/s]、測定点2で日最大平均風速約12[m/s]、測定点3、4で日最大平均風速約10
[m/s]のときである。このとき歩くことに不便を感じる(現象3、4)人は約30%である。ま
た、家の中では建具がガタガタなったり(現象10)、隙間風が多くなって、暖房がききに
くくなったり(現象11)する。80%の居住者が不快である(評価段階5、6、7)と感じ始める
のは、測定点1で日最大平均風速約20[m/s]、測定点2〜4で日最大平均風速15[m/s]前
後である。このとき約60%の人が、歩くことに不便を感じ、また、家の中にいる人は強風
のため外出をできるかぎり避ける(現象14)。
- 2. さらに、アンケート調査結果と実測結果の比較検討を行い、新たな風環境評価尺度
を作成する予定である。
謝辞
本研究を行うにあたり、新潟市役所の各位、風工学研究所の各位、アンケート調査に
御協力を頂いている居住者の各位の御協力を得ました。ここに記して深く感謝の意を表
します。
参考文献 前報に記す。