完全混合濃度に基づく基本必要換気量
たばこに対する基本必要換気量
- 5.1 完全混合濃度に基づく基本必要換気量
- 5.1.2 たばこに対する基本必要換気量
- 煙草(喫煙時)は、発生する汚染質の種類・量のすべては明確に分からない汚染源である。したがって先ず総合的指標である二酸化炭素の設計基準濃度(1000ppm)に基づいて換気量を算出し、また一酸化炭素、浮遊粉じん、二酸化窒素、ホルムアルデヒドなど発生量のわかっている汚染質とそれぞれの単独指標としての設計基準濃度からも換気量を算出する。これらのうちの最大の換気量を基本必要換気量とする。
- ただし、一般的な煙草に対しては、参考値(130[m3/本])*1を用いて基本必要換気量を算定することができる。この参考値は煙草からの汚染質発生のみを対象としたものであり、通常は人間など他の汚染源が同時に存在するので、5.1.5項に示す方法で基本必要換気量を算定しなければならない。
- また換気以外の手段、例えば空気浄化装置などにより浮遊粉じん量を低減できる場合にはその性能に応じて基本必要換気量を低減することができる。ただし、この場合でも基本必要換気量は浮遊粉じん以外の他の指標(一酸化炭素、二酸化炭素など)に基づく数値を下回ってはならない。
*1煙草に対する基本必要換気量の参考値は130[m3/本]である。これは現在一般的に喫煙される煙草のうち、汚染質発生量が比較的多いものについて算定される値である。また煙草は種々の汚染質を発生するが、浮遊粉じんに対する必要換気量が最も多く、上記の数値は導入外気の浮遊粉じん濃度が0[mg/m3]の場合に算定される値である。
- 煙草は種々の汚染質を発生するが、発生する汚染質の種類・量が完全にわかっているわけではない。したがって室内空気環境の総合的指標としての二酸化炭素の設計基準濃度に基づいた換気量を算出しなければならない。さらに本文表−1に示した汚染質のうち発生量のわかっているものについては単独指標としての設計基準濃度を用いて換気量を算出しなければならない。これらの換気量のうちの最大値を基本必要換気量とする。
- 一般的には本文表−1に示す汚染質のうち一酸化炭素、浮遊粉じん、二酸化窒素、ホルムアルデヒドなどが発生するが、すべての種類の煙草について発生量などのデ−タが整備されているわけではない。ここでは現在デ−タが比較的そろっている煙草について表−3に示す。
表−3 喫煙1本あたりの汚染質発生量(煙草の種類:ハイライト)16)
汚染質の種類 | 一酸化炭素 | 二酸化炭素 | 浮遊粉塵 |
---|
発生量 | 0.00006m3/本 | 0.0022m3/本 | 19.5mg/本 |
- 本文*1で示した参考値は表−3に示す煙草に対するものである。すなわちこの煙草を喫煙した場合の一酸化炭素、二酸化炭素、浮遊粉じんの発生量とそれぞれの汚染質に対する設計基準濃度を本文(1)式に適用し、最大の換気量を基本必要換気量としたものである。以下に示すとおり浮遊粉じんに対する換気量が最大となり、基本必要換気量は浮遊粉じんによって決まる。
- 二酸化炭素に対する必要換気量は、外気の二酸化炭素濃度を350ppmとし、また、総合的指標としての設計基準濃度1000ppmを用いて、次式となる。
- Qp<CO2’>=0.0022[m3/本]/((1000−350)×10−6)=3.4[m3/本] ・・・(3)
- また、浮遊粉じんに対する必要換気量は、外気の浮遊粉じん濃度が0mg/m3の場合、設計基準濃度が0.15mg/m3であるから、次式となる。
- Qp<du>=19.5[mg/本]/(0.15[mg/m3]−0[mg/m3])=130[m3/本] ・・・(4)
- また、一酸化炭素に対する必要換気量は、外気の一酸化炭素濃度が0ppmの場合、設計基準濃度が10ppmであるから、
- Qp<CO>=0.00006[m3/本]/((10−0)×10−6[m3/m3])=6.0[m3/本]
- となり、浮遊粉じんに対する必要換気量が最大となる。
- ここで示した数値は煙草の種類としてハイライトのデ−タを用いて算出している。この値は一般に喫煙される煙草より多少大きいものであるが、喫煙される煙草の種類を部屋毎に特定できる場合は非常に少なく、また、換気の観点から安全側のデ−タであると判断してこの数値を参考値として示した。
- また、ここでは、喫煙に対する基本必要換気量を示したが、分煙など建築計画上の工夫や換気方式の適切な計画など、非喫煙者に対する配慮を積極的に考えるべきである。
- 本規準では煙草(喫煙)1本当たりの基本必要換気量の算定方法を示したが、喫煙本数を想定しないと居室に対する基本必要換気量が求められない。以下の@からEに喫煙本数の推定方法の例16)を簡単に説明する。
- @在室者数nを設定する。
- A表−4などより男女構成比(男性の比率:m、女性の比率:w18))を設定する。
- B表−5の煙草常用者率(男性:tm,女性:tw)18)、20)を用いて在室者平均煙草常用者数Nsおよび煙草常用率Psを算出する。
- Ns=n×(m×tm+w×tw) ・・・(6)
- Ps=Ns/n ・・・(7)
- C最大煙草常用者数Nを算出する(99.9%の出現確率を見込んだ最大煙草常用者数)。
- N=Ns+3(n・Ps・(1−Ps))−0.5 ・・・(8)
- D表−6の常用者喫煙率βs18)〜20)を用いて、同時喫煙数Nx[本]を算出する。
- Nx=N×βs ・・・(9)
- E表−6の平均喫煙時間ts[min]から単位時間当たりの喫煙本数Nt[本/h]を算出する。
- Nt=(60/ts)×Nx ・・・(10)
表−4 室用途別男女構成比18)
| 事務所 | 銀行客だまり | 喫茶店 |
---|
男性の比率m | 0.70 | 0.65 | 0.55 |
女性の比率w | 0.30 | 0.35 | 0.45 |
表−5 煙草常用者率18)、20)(日本たばこ産業調べ(1994年))
| 男性tm | 女性ts | 全体t |
---|
常習者率 | 0.60 | 0.14 | 0.36 |
表−6 常用者喫煙率(βs)と平均喫煙時間ts18)〜20)
| 事務室 | 待合室 | 銀行客だまり | 喫茶店 | 会議室 |
---|
常習者喫煙率βs | 0.15 | 0.65 | 0.13 | 0.34 | 0.28 |
平均喫煙時間(ts[min/本]) | 3.5 | 6.5 | 4.3 | 5.5 | 5.2 |
- 喫煙本数の推定例
- 前述の[1]から[6]の手順に従って喫煙本数を推定した例を以下に示す。
- 計算条件:床面積200m3の事務室(在室密度:0.1人/m2)
- [1]在室者数:20人(計算条件より)
- [2]男性の比率m:0.7、女性の比率w:0.3(表−4より)
- [3]男性の煙草常用者率tm:0.60、女性の煙草常用者率tw:0.14(表−5より)
在室者平均煙草常用者数Ns:Ns=20×(0.7×0.60+0.3×0.14)=9.2人((6)式より)
煙草常用率Ps:Ps=9.2/20=0.46((7)式より)
- [4]室内最大煙草常用者数N:N=9.2+3×(20×0.46×(1−0.46))−0.5=15.9人((8)式より)
- [5]常用喫煙率βs:0.15(表−6より)
同時喫煙数Nx:Nx=15.9×0.15=2.385本((9)式より)
- [6]平均喫煙時間ts:3.5min/本(表−6より)
喫煙本数Nt: Nt=(60/3.5)×2.385=40.9本/h((10)式より)
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