汚染質の室内混合性状に基づく設計必要換気量
完全混合状態の場合の設計必要換気量
5.2 汚染質の室内混合性状に基づく設計必要換気量
5.2.1 完全混合状態の場合の設計必要換気量
室内の汚染質の混合状態が定常完全混合の場合は、基本必要換気量を設計必要換気量とする。この場合、信頼性の高い実験やCFD(計算流体力学)などによって定常完全混合状態であることを確認する必要がある。ただし、以下の(1)、(2)の場合、室内を定常完全混合状態と見なすことができる。
(1)汚染質発生源が主に人間であり、気積に対する室内給気量が多く(1時間当たりの給気量が気積の6倍以上)、給気に占める還気の割合が大きい(再循環率が70%以上)換気・空調方式を採用した居室。
(2)汚染質発生源が主に人間であり、気積に対する室内給気量が多く(1時間当たりの給気量が気積の6倍以上)、吹出し気流が室内で十分拡散し、大きな温度分布が生じない換気・空調方式を採用した居室。
- 基本必要換気量は5.1に示したとおり、定常完全混合状態を仮定した場合の汚染質濃度に基づく必要換気量である。したがって、実際の室内での汚染質拡散性状が定常完全混合状態の場合は、基本必要換気量が設計上確保すべき換気量(設計必要換気量)となる。
- 基本必要換気量を設計必要換気量として採用する場合は定常完全混合状態と見なして良いかを、実験やCFD(計算流体力学)などにより確認する必要がある。模型実験やCFDにより確認することができた場合は定常完全混合状態として設計必要換気量を求めることができる。ただし、確認のための模型実験やCFDは信頼性の高いものでなければならない。
- 以下の(1)、(2)の場合は、一般的に汚染質の混合状態がほぼ定常完全混合であることが報告されており、これらに該当する場合は定常完全混合状態であると考えて良い。
- (1)再循環空気量が多い換気・空調方式
- 還気と取り入れ外気との混合空気を給気する室内空気循環型の換気・空調方式では、気積に対して室内給気量が多く、主な汚染発生源が人間であり、また、室内給気量に対する取り入れ外気量の割合が小さい場合、完全混合状態と見なせる。
- 室内給気の汚染質濃度は還気と取り入れ外気の汚染質濃度の流量重み付き平均である。還気量(再循環空気量)が多ければ、給気濃度は排気濃度に近づき、汚染質発生が室内で特に偏在していなければ、室内の汚染質濃度は給気濃度と排気濃度の間の値となり、室内の汚染質濃度の分布はほぼ均一となる。
- 一般に、汚染質発生源が主に人間であり、気積に対する室内給気量が多く(1時間当たりの給気量が気積の6倍以上)、かつ給気に占める還気の割合が70%以上(再循環率が70%以上)であれば、室内は定常完全混合状態と見なして設計必要換気量を算出してよい22),23),24)。
- (2)室内で大きな温度分布が生じない換気・空調方式
- 一般に空調されている室内では、汚染質濃度分布の偏りの程度は温度分布のそれから類推できる。室内に過大な温度分布が生じなければ、汚染質濃度分布もほぼ均一となる。これは過大な温度分布が生じないように、吹出し気流と室内空気の混合やショ−トサ−キットの防止などが図られた室内では、熱だけでなく発生汚染質もよく混合するためである。(1)の条件を満たさない場合、すなわち還気量に対して取り入れ外気量の多い空調方式でも、気積に対する室内給気量が多く(1時間当たりの給気量が気積の6倍以上)、吹出し気流が室内で十分拡散して大きな温度分布が生じない状態となることが確認されていれば、室内は定常完全混合と見なしてよい。
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