研究紹介

1.新潟県の住宅における室内化学物質汚染に関する調査研究

近年、新築住宅を中心に、床材や壁紙、塗料などの建築材料や生活で使用する殺虫剤や防腐剤などを起源とする化学物質の室内空気汚染(いわゆるシックハウスシンドローム)が問題となっている。本研究では、新潟県の一戸建て住宅を対象として、室内空気質に関するアンケート調査及び室内における化学物質濃度の実態調査を行い、住まい方やシェルター性能と室内空気質(ホルムアルデヒド濃度とVOC’s濃度)の関係を明らかにする。又、新築住宅を対象として室内におけるVOC’sの放散量を定量的に測定し放散量の時間変化を明らかにする。
2.高効率換気システムに関する研究

オフィス空間を対象として呼吸域に直接新鮮外気を供給する方式について、実大実験により検討し、外気の供給効率を空気齢を用いた空気交換効率により評価する事を目的とする。
3.建物周辺の風環境数値解析に関する研究

市街地の風環境評価を行う際には、計画建物に隣接して高層建物が存在する場合や、計画建物が複数存在する場合が殆どである。しかし、現在行われている風環境数値解析の研究の多くは建物が単体の場合を対象としたものである。
本研究では、2棟の建物モデルを用い相互の影響により生じる地上面付近の強風域が既往の数値解析手法によってどの程度の精度で再現されるかを風洞実験結果と比較することにより明らかにし、数値解析の精度を向上させることを目的とする。
4.東北地方を対象とした太陽光発電の有効性の検討

東北各県の住宅に太陽光発電システムを導入することによる経済効果、二酸化炭素の排出削減量による環境評価を行い、太陽光発電システムの有効性を検討することを目的としている。
5.住宅の室内温熱環境・冷房負荷に関する数値解析

本研究では、夏季において、(1)夜間通風 (2)日射遮蔽 ,(3)蓄熱体の設置を利用した環境調整手法を対象に室内温湿度、冷房負荷に関する数値解析を行い、快適で省エネルギー性に優れた冷房・通風方法について検討することを目的としている。
6.室内気流分布を考慮した住宅の通風性能評価に関する研究

本研究では、室内外気流同時解析による乱流数値計算及び多数室熱負荷・換気回路網計算により、通風時の室内の体感温度指標を算出し、通風による室内温熱環境の改善効果の定量的評価を試みます。
7.通風性能評価に関するデータベース

本研究室では通風性能評価を室内通風デグリアワー(室内CVDH)により行うことを試みている。
単純住宅モデルにおいて算出された、25case、全国842地点の室内CVDHを各都市の最適開口条件と通風の効果の定量的な評価。及び、CFD解析により算出された、各住宅モデルの気流分布をデータベースとして掲載する。
8.家庭用エアコンを対象とした実使用時のCOPに着目した最適機種選定方法に関する研究
 
我が国の住宅におけるエネルギー消費の内訳では暖冷房用途が約26%であり、暖冷房機器・設備の高効率化は重要な課題である。特にヒートポンプにより暖冷房を行うエアコンは暖冷房負荷・外気温により成績係数(COP)が大きく変化するため、適切な配置計画を行う必要がある。しかし、家電量販店などではエアコンは6畳用・8畳用等、設置する部屋の大きさのみで機種選定されることが多く、このような機種選定を行った場合、実際のエアコン使用時では殆どの時間はエネルギー効率の悪い部分負荷状態やON-OFF運転している状況にあり、省エネルギーの観点で大きな問題となっている。
本研究では、家庭用エアコンの外気温毎・暖冷房負荷毎の成績係数(COP)を簡易カロリーメータにより測定し、COPマトリックスデータベースを構築する。蓄積したCOPマトリックスデータと熱負荷シミュレーション結果を照合することで、住宅に最適的なエアコンの機種及び台数を自動的に提示できる「家庭用エアコン最適選定ツール」を開発することを目的とする。





9.家庭用燃料電池による一次エネルギー削減効果に関する研究 
その1 東北電力管内及び東京電力管内における時刻別一次エネルギー換算値の算出と一次エネルギー削減効果に関する研究

 東日本大震災以来、2015年8月時点では国内の原子力発電所は全面停止しており、火力発電がその大部分を補っている。一般電気事業者の火力発電設備の受電端総発電効率は約37%であり、発電時に消費された一次エネルギーの大半が空気中及び海中に放出され続けているのが現状である。我が国の電力供給におけるエネルギーベストミックスの観点からも多様な発電方法を検討し、更なる一次エネルギーの利用方法の高効率化を検討する必要がある。近年、電気と熱を同時に発生させて一次エネルギー利用効率を飛躍的に向上させることが可能な家庭用燃料電池コージェネレーションシステムが実用化されている。燃料電池は都市ガスなどから燃料となる水素を取り出し発電させ、発電時の廃熱を給湯や暖房に利用する事で一次エネルギーの利用効率を約80%まで向上させることが可能であり、省エネルギー効果が期待される。
本研究では、日本全国の多数の住戸に家庭用燃料電池を設置して稼働させた場合に、全国における一次エネルギー消費量を算出することにより、燃料電池による省エネルギー効果の検討し、燃料電池の分散型代替電源としての評価を行う事を目的とする。

9.家庭用燃料電池による一次エネルギー削減効果に関する研究 

その2 日本全国を対象とした家庭用燃料電池による一次エネルギー削減効果に関する研究
10.数値解析を用いた風速変動を考慮した戸建住宅の通風性状に関する研究

 既往の建物の換気・通風性能評価に関する研究では、時間平均的な解析が数多く行われ、定常的な通風性状について徐々に明らかにされている。一方、実際の環境下では外部風の風向・風速は絶えず変化し、壁面の圧力分布が時間的に変化するため、定常的には通風が得られない開口条件でも、非定常的には通風が得られることが知られている。このような条件下では既往の自然換気・通風性能評価手法による換気効果の定量的評価が困難であり、非定常流の風速変動を考慮した新たな自然換気・通風性能評価手法が必要である。
本研究では、LES(Large-Eddy-Simulation)により建物周辺と建物内部の非定常流体現象を解析し、様々な開口条件における単純住宅モデルの非定常数値流体解析を行う。更に風速変動を考慮した自然換気・通風性能評価手法を開発し、非定常流体現象により生じる住宅の換気・通風量を定量的に評価することを目的とする。
11.粒子画像流速測定法(PIV)を用いた室内気流測定方法に関する研究

 室内環境を計画する上で気流や温度等の居住空間内における分布性状を把握することは極めて重要である。しかし、熱線風速計等による従来の風速測定では空間的な気流分布を多数の点で同時に測定し、定量的に評価することは困難である。近年、流れの可視化にデジタル画像解析を融合させた粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry : PIV)が実用化されている。
本研究では、単純住宅モデルを対象に大型境界層風洞を用いて変動気流場における通風現象の可視化及びPIV測定を行った結果を報告する。単純住宅モデルは2種類作成し、風向に対する設置条件を変化させ、可視化及びハイスピードカメラによる撮影を行う。定性的な流れの可視化及びPIV測定による定量的な風速ベクトルの測定を行い、通風時の風速変動による室内外気流性状の特性を把握することを目的とする。
12.完全人工光型植物工場を対象とした省エネ型植物栽培設備の開発研究
その1 省エネ型栽培設備の気流及び濃度分布の解析と植物栽培実験結果及び電力消費量の比較

近年、無菌・無農薬・ゼロベクレルの農作物を通年計画栽培することが可能な完全人工光型植物工場が注目されている。従来の農業生産方法と比較して植物工場産の植物は生産コスト(照明・空調費)が高いことや植物から発生する水蒸気・O2・CO2濃度分布の適切な制御が大きな課題である。
本研究では、超高効率光反射材を用いた光・空調制御ダクト型栽培設備を新たに開発し、省エネ型栽培手法の構築を行うことで、植物工場のランニング時のエネルギー(照明・空調)削減効果の検討を行うことを目的とする。数値流体解析(CFD)を用いて植物の栽培に適した空気環境を形成するための換気方法を検討し、光・空調制御ダクト型栽培設備の設計を行う。設計した栽培設備を実際に作成してリーフレタスの栽培を行い、蛍光灯等を用いた従来型栽培方法と植物生産時のエネルギー消費量を比較することで、省エネ型栽培手法によるエネルギー消費量の削減効果の評価を行う。
12.完全人工光型植物工場を対象とした省エネ型植物栽培設備の開発研究

その2 省エネ型栽培設備内の換気効率の解析結果及び冬季におけるコンテナ式植物工場全体のエネルギー消費量の削減効果
13.ゼロエネルギーハウス(ZEH)を対象としたライフサイクルコストに関する研究

 日本のエネルギー基本計画(2014年4月閣議決定)では,2030年までに一般の新築住宅の平均でゼロエネルギーハウス(ZEH)※1の実現を目指す事が設定され,ZEHの普及が推奨されている。ZEHの普及は,住宅のエネルギー消費量の削減に大きな効果をもたらすと考えられるが高気密・高断熱化,空調や給湯等の各種住宅設備機器の高効率化と太陽光発電の設置が必要不可欠であり,イニシャルコストが大幅に増加すると考えられる。本研究では,全電化戸建住宅を対象とし,空調,給湯,各種電気機器の年間電力消費量と地域毎の太陽光による発電電力量を算出し,年間の収支を検討することでZEHに必要な太陽光発電敷設面積の検討を行う。また,ZEHに必要な建設費や太陽光発電,設備更新費等のイニシャルコストと,系統電力からの買電料金及び余剰発電量の売電料金を算出し,ランニングコストを求める。本研究では,ZEH化のイニシャルコストの増加と省エネルギー効果により削減されるランニングコストを検討することでZEHのライフサイクルコストを明らかとすることを目的とする。
14.IoTによる住宅の換気システム制御に関する研究

 本研究ではCFD解析(RANS)を用いて居室内の各場所で発生する汚染質の拡散状況を解析し、汚染質の発生に対して短時間で濃度を検知できる測定位置を明らかにすることを目的とする。更に、汚染質の発生を検知し、排気口位置及び換気量を変更した場合の汚染質の拡散状況を把握し、汚染質を速やかに排出できる換気システムの検討を行い、住宅の換気システムにIoTを取り入れる為の基礎的な検討を行うことを目的とする。
15.大学施設におけるエネルギー消費に関する研究

本研究では,始めに我が国における本学のエネルギー消費レベルを把握するため,全国の国立大学との比較を行い ,更に全国の国立大学のエネルギー消費実態の分析を行う。次に本学の主要2地区 旭町地区・ 五十嵐地区の一次エネルギー消費量について分析する。 特に電力については,各配電系統の電力消費実態に関する詳細な分析を行う。次に旭町キャンパスを対象に,CGSをピーク時のみ稼働させる場合と,稼働時間を変化させた場合の一次エネルギー消費量及びランニングコストの分析を行い,今後の省エネルギー計画の策定 ・ 実行に有用な資料を得ることを目的とする 。
16.パッシブハウスの性能評価に関する研究

本研究では、パッシブな手法の有効性を検討するため、外壁を全てガラスとした住宅 ( 以下、ガラス住宅 )壁だけの住宅 ( 以下、壁住宅 )、南面のみに開口を設置した住宅 (以下、南窓住宅 )を対象とし、開口の大きさや配置の検討を行う。又、換気口の開閉により変化する自然換気量をパラメータとして、日射取得による室温への影響の検討を行う。更に、断熱・蓄熱性能をパラメータとし、住宅性能が室内環境に及ぼす影響を検討し、挟み撃ち的な手法でパッシブハウスの最適な設計方法を明らかにすることを目的とする。
17.自然換気の非定常性に関する研究

本研究では、平均風圧による換気量に対して瞬時風圧による換気量の算出を行うことで、風圧変動による自然換気量を定量的に評価することを目的とする。外部風による風速、風圧の時間変動を解析することができるLarge-Eddy Simulation(以下:LES)を用いて単独及び複数の建物モデルを対象とした解析を行い、算出された壁面の時系列圧力データから風圧係数を算出する。算出された風圧係数を基に換気回路網計算を行い、平均風圧及び風圧変動による自然換気量の算出を行う。